ガザで支援物資の配給、米支援の団体が開始 人々が殺到し混乱

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パレスチナ・ガザ地区南部ラファで27日、アメリカとイスラエルが支援し、論議を呼んでいる団体が設置した支援物資の配給所に、数千人のパレスチナ人が殺到し、混乱が生じた。この配給所は前日に業務を開始したばかりだった。
現地の映像では、「ガザ人道財団(GHF)」がラファに設置した施設においてフェンスや盛り土が破壊され、その上を群衆が歩いている。
別の動画では、数千人の男性、女性、子どもたちが配給所の敷地に流れ込んでいる。銃声と思われる音が鳴り響く中、人々が走ったり身をかがめたりしている動画も出回っている。
目撃者は、人々が食料などの支援物資を奪い取り、混乱状態だったと話した。また、近くに駐留していたイスラエル兵らが発砲したと述べた。
GHFによると、あまりに多くの人が支援物資を手に入れようと訪れたため、スタッフらが一時退避したという。
イスラエル軍は、近くにいた兵士らが威嚇射撃をしたと説明した。
GHFは、ガザでの支援物資の配給を、国連を通さずに、自分たちが主体となって実施することを活動目的としている。アメリカの武装警備請負業者を使っている。
ガザへの支援物資の搬入は、イスラエルが11週間にわたって阻止していた。封鎖は最近、緩和されたが、専門家らは、飢餓の危機が迫っていると警告している。
GHFは前日の26日、「ガザでの活動を開始した」と発表。配給所でパレスチナ人に支援物資を配り始めた。
イスラエル軍は27日午後、ラファのタル・アル・スルタン地区とモラグ回廊(ラファとガザの他地域を隔てる、東西に延びる軍事地帯)の2カ所で、食料の配給が開始されたことを確認した。
GHFをめぐっては、国連や多くの援助団体が協力を拒否している。その活動が、人道主義の原則に反し、「支援を武器化」していると思われるというのが理由。実質的に、移動が困難な人々を排除し、避難をさらに強いるほか、何千人もの人を危険にさらし、支援を政治的・軍事的な目的と関連づけているため、世界各地での援助物資配給にとって容認し難い前例になるとしている。
国連の報道官は、GHFの取り組みは「実際に必要なことから目をそらすもの」だとし、すべての検問所を再開するようイスラエルに求めた。
一方、イスラエルは、イスラム組織ハマスが支援物資を盗むのを阻止するため、現行の配給システムに代わるものが必要だと主張している。
ハマスは、自分たちは支援物資を盗んではいないと反論している。
GHFは声明で、「現場のニーズは大きい」とし、これまでに現地のNGOと協力して、食料を入れた箱約8000個(46万2000食分)を配ったとした。
また、「ハマスによる封鎖のせいで」パレスチナ人が配給地点に行くのに通常より数時間の時間がかかったと、根拠を示さず説明した。

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この日の配給所での混乱について、現場にいたという男性は、「極めて困難な状況だった。(GHFは)一度に50人しか中に入れなかった」、「ついには混乱状況が発生した。人々はゲートを乗り越え、他の人々を攻撃し、すべて(の支援物資)を奪った」と、BBCアラビア語のラジオ番組で話した。
この男性は、「屈辱的な経験だった」、「私たちは飢えて苦しんでいる。お茶をいれるためのわずかな砂糖と、食料のパンを探しているだけだ」と続けた。
ある女性は、飢えと困窮で「すべての人が参っている」と述べた。「人々は疲れ切っている。食料を見つけ、子どもたちに食べさせるためなら、命を危険にさらすることさえする」。
ガザでハマスが運営する政府メディアオフィス(GMO)は、イスラエルによる支援物資の配給が「惨めに失敗した」とした。また、人々がGHFの配給所に行くのをハマスが止めようとしたことはないと主張した。

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国連のステファン・デュジャリック報道官はニューヨークでの記者会見で、「『ガザ人道財団』が設置した物資配給所の周辺で撮影された映像を見ている。率直に言って、これらの映像、画像には心が痛む」と述べた。
そして、「私たちと複数の提携組織には、絶望的な状況にある人々に援助を届けるための、詳細で、原則に従い、健全に実行できる計画があり、加盟国の支持も得ている。飢饉(ききん)を防ぎ、どこだろうとすべての人々のニーズに応えるためには、人道活動の意味ある拡大が不可欠だと、私たちは引き続き強調する」と付け加えた。
国連によるこうした批判を、米国務省のタミー・ブルース報道官は「偽善の極み」だと非難。「残念なことに、いま問題なのはガザに支援物資を届けることなのに、突然、支援のスタイルや支援者の性質に関する不満が問題になってしまっている」と記者団に述べた。
GHFの独立性と中立性についてBBCから問われると、ブルース氏は、この地域での食料と支援物資の配給の方法をめぐっては「多少の意見の違い」があると認めたうえで、「私たちのほとんどは、これが良いニュースだと同意すると思う。(中略)本当の話題は、食料支援が運び込まれているということだ」と述べた。

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GHFの当初の計画では、ガザ南部と中部の4カ所に配給所を設置し、パレスチナ人が支援物資を受け取れるようにする。GHFは、今週末までに100万人(ガザ人口の半分弱)に食料を供給することを目標としている。
GHFの配給所は、アメリカの請負業者が安全を確保し、イスラエル軍が周囲をパトロールする。パレスチナ人は、身分証明書のチェックとハマスとの関係についての審査を受けなければ、配給所内に入れない。
GHFのジェイク・ウッド代表は25日夜、辞任を表明した。現状のシステムでは、人道主義の原則の尊重や公平性、独立性などを実現できないと、理由を説明した。
これに対しGHFの理事会は、ウッド氏の批判は当たらないとし、「現状から利益を得ている人々」が「支援物資を運び入れることより、今の状況を引き裂くこと」に専念していると非難した。
GHFは26日、ハマスについて、支援物資の配給所で支援活動をするNGOに殺害予告をし、人々が支援物資を手に入れるのを妨害しようとしたと主張した。
ハマスはパレスチナの人々に対し、GHFに協力しないよう警告している。