EU、イスラエルのガザ攻撃はハマスとの戦いに「必要な範囲を超えている」と非難

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欧州連合(EU)のカヤ・カラス外務・安全保障政策上級代表は28日、パレスチナ・ガザ地区におけるイスラエルの空爆は「(イスラム組織)ハマスとの戦闘に必要な範囲を超えている」と述べた。現地では犠牲者が増え続けている。
カラス氏はまた、アメリカとイスラエルが支援する新しい人道支援の分配モデルについて、EUは支持しないとの立場を示した。このモデルは、国連やその他の人道支援団体を迂回する形で支援を行うものだという。
「人道支援の分配を民間に委ねることは支持しない。人道支援は武器として利用されるべきではない」とカラス氏は話した。
イスラエルは、一時停戦後の3月に戦闘を再開して以降、空爆などの軍事行動を続けおり、ハマスが運営するガザ地区の保健省は、それ以降に3924人が殺されたと発表している。イスラエル側は、ハマスの壊滅と人質の解放が目的だと主張している。
イスラエルによる最近の空爆では、多数の民間人が犠牲となっている。24日には、南部ハンユニスでの空爆により、パレスチナ人医師の10人の子どものうち9人が死亡した。また、26日から27日にかけての夜間には、ガザ北部で避難民が身を寄せていた学校の建物が攻撃され、少なくとも35人が死亡した。
カラス氏の発言は、ドイツのフリードリヒ・メルツ新首相による介入に続くものだ。メルツ首相は先に、「もはやイスラエルの目的が理解できない」と述べ、包囲されたガザでの軍事行動を疑問視した。
「民間人がこれほどまでに被害を受けている状況は、もはやハマスのテロとの戦いとして正当化できない」とメルツ氏は述べている。
EUは、ガザ地区への人道支援における最大級の支援母体。しかし、カラス氏によると、現在その大半が支援を必要とするパレスチナ人に届いていないという。イスラエルは3月にガザ地区への完全封鎖を実施し、その後11週間を経て、わずかな支援物資の搬入を認め始めた。
カラス氏は、「ガザへの支援の大半はEUが提供しているが、イスラエルによって遮断されており、人々に届いていない」と述べた。
「人々の苦しみは、もはや看過できない」とも語った。
欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長も、最近のイスラエルによるガザの民間インフラ攻撃について、「忌まわしく、過剰だ」と非難した。
こうした発言は、イギリス、フランス、カナダによるこれまでで最も強い批判に続くもの。3カ国はイスラエルに対し、ガザでの軍事作戦の即時停止を求めている。イギリス政府はその後、イスラエルとの貿易交渉を一時停止すると発表した。
EUもイスラエルとの貿易協定の正式な見直し手続きを開始しており、カラス氏は、6月23日にブリュッセルで開かれるEU外相会合で「選択肢」を提示する意向を示している。
イスラエルとアメリカの支援分配システム
国連機関は、イスラエルによる約3カ月にわたる封鎖の影響により、ガザの人口約210万人が壊滅的な飢餓状態に直面していると警告している。
イスラエルとアメリカは、「ガザ人道財団(GHF)」と呼ばれる新団体が主導する支援物資の分配システムを支援している。
このGHFによる支援分配システムは、アメリカの民間警備会社を活用し、国連を迂回する形で運用されている。国連はこの仕組みについて、「非倫理的かつ実行不可能だ」として拒否している。
アメリカとイスラエルの両政府は、この新たなシステムがハマスによる支援物資の略奪を防ぐための措置だと主張しているが、ハマス側は物資略奪を否定している。

イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は27日、ガザ地区全域の住民を南部の「不毛地帯」へ移動させる計画をあらめて表明した。イスラエル軍は他の地域でハマスとの戦闘を継続している。
ネタニヤフ首相はまた、ガザ住民の大部分を他国へ「自発的に移住」させる方針を強調したが、この計画については、多くの関係者が「強制的な追放」と見なしている。
イスラエルは、2023年10月7日にハマスが越境攻撃を行い、約1200人を殺害、251人を人質として連れ去ったことを受けて、ガザ地区での軍事作戦を開始した。
同地区の保健省によると、それ以降の死者数は少なくとも5万4084人に上っている。