カナダ首相、欧州の防衛計画に加わりたいと 強度の米依存は「賢明ではない」

カナダのカーニー首相

画像提供, Getty Images

画像説明, カナダのカーニー首相は、国防でアメリカに頼り過ぎるのは「賢明ではない」としている

カナダのマーク・カーニー首相は27日、ヨーロッパの防衛強化計画に、カナダも7月1日までに加わりたいとの意向を示した。

カーニー氏はカナダの公共放送CBCのインタビューで、欧州再軍備計画「リアーム・ヨーロッパ」にカナダが加わることを望んでいると述べた。この再軍備計画は、今後5年間でヨーロッパの防衛費を劇的に増やすもので、アメリカへの依存を減らす狙いがある。

カーニー氏は、「(カナダの)防衛支出の75パーセントはアメリカに流れている。賢明ではない」とした。

カナダとアメリカの関係は、ドナルド・トランプ米大統領の脅しとも取れる発言を受け、緊張が高まっている。ただ、カーニー氏は以前、トランプ氏が提案しているミサイル防衛構想「ゴールデン・ドーム」への参加に前向きな考えも示している。

こうしたなか、カナダのデイヴィッド・マクギンティー国防相は28日、世界的な脅威の高まりを受け、早急に防衛力を強化させる意向を表明。ロシアによるウクライナでの戦争や、中国の主張の強まりに言及しながら、「世界の安全保障環境は現在、不安定で不確実だ」と述べた。

マクギンティー氏はまた、今後は北極圏に重点を置くと説明。北極圏をめぐっては、カナダの主権に疑問を唱えている国もある。

国防は、カナダ議会で27日にあった、新たな議会の開会と政権の課題を説明する演説でも取り上げられた。この演説は、カナダの君主である英国王チャールズ3世が読み上げた。国王は、カナダのアイデンティティーと主権を明確にすることを目的に、カナダを公式訪問していた。

演説では、カナダ軍の「再建、再武装、再投資」への取り組みが強調された。また、ヨーロッパの同盟国との防衛関係の強化という政府の目標についての説明があり、「リアーム・ヨーロッパ」計画への参加についての言及もあった。

動画説明, チャールズ国王がカナダを訪問、「力強く自由だ」とアメリカをけん制

NATOの目標をクリアせず

北大西洋条約機構(NATO)のマルク・ルッテ事務総長は26日、カナダを含む加盟各国が防衛費を、国内総生産(GDP)の5%相当まで引き上げることを期待すると述べた。

NATOはこれまで、GDPの2%を目標として掲げてきた。しかしルッテ氏は、ロシアや中国など、ますます強力になる敵対国から自分たちを守る準備が必要だと、アメリカで開かれたNATOの会議で述べた。

ルッテ氏はロシアについては、「中国、北朝鮮、イランと手を組んでいる」、「軍と軍事能力を強化している。長期的な対立に備えている」との見方を示した。

NATOの防衛費目標の引き上げ計画は、加盟各国の首脳らが承認する必要がある。各国首脳らは6月下旬、オランダで会合をもつ予定となっている。

カナダは長い間、NATOの目標をクリアしておらず、プレッシャーを受けてきた。昨年はアメリカのマイク・ジョンソン下院議長に、「アメリカの尻馬に乗っている」と非難された。

カナダの経済界からは、経済の活性化につながるとして、防衛支出の大幅増を政府に求める声が上がっている。

「51番目の州になればコストはゼロ」

カーニー氏は先週、トランプ氏が打ち出したミサイル防衛構想「ゴールデン・ドーム」への参加について、アメリカとの間で「ハイレベル」の協議が進んでいると述べた。

一方、トランプ氏は27日夜、自身のソーシャルメディア「トゥルース・ソーシャルに」、カナダが「別々の、不均衡な国家であり続けるなら」、ゴールデン・ドーム構想で610億米ドルをカナダは負担しなくてはならなくなると投稿。

「だが、私たちの大切な51番目の州になれば、コストはゼロドルになる」、「カナダはこの申し出を検討している!」とした。

これに対しカーニー氏側は声明で、「カナダは独立した主権国家であり、今後もそうあり続けることを、トランプ大統領との対話など、あらゆる機会で明確にしてきた」とした。

こうしたなか、カナダの国連大使はXでトランプ氏のコメントを再投稿し、「別の状況では、これは『用心棒代の要求』と呼ばれるだろう」と書いた。